ローマ帝国以来、アメリカほど経済的、文化的、軍事的に力をもった国はなかったが、その力をもってしてもテロリズム、環境問題、大量破壊兵器の拡散といった世界規模の問題は、他国の関与なしには解決できない。『The Paradox of American Power: Why the World's Only Superpower Can't Go It Alone』で、著者のジョセフ・ナイは上に挙げた問題など、新しい挑戦の台頭に焦点をあわせ、アメリカが他の国々との協力関係の構築に努力しなければならない理由を明確にしている。
ナイによれば、テロの脅威は確かにわれわれを驚愕させたが、強弱にかかわらずすべての国家と建設的な関係を築く努力の必要性を示す、たった1つの例にすぎない。今、かつてないほどに技術は広がることにより、多国籍企業からテロリスト集団まで、さまざまな非政府組織が力をつけてきているが、それに伴い、アメリカの指導者層も国際化する社会に向けて構築し直す必要がある。さらに、国際金融の安定から、麻薬密輸、地球気候変動、テロリズムにいたるまで、多くの主要な課題は軍事力だけでは解決し得ず、軍事力に訴えることはときとしてわれわれを目的の達成から遠ざけることすらある。軍事力に代わって今世紀アメリカが頼るべきものとしてナイが力強く提唱するのは「ソフト・パワー」、すなわち文化、価値、制度の魅力が生み出す力であるが、それもアメリカが利己的で、自国の利益によってのみ動くと考えられている限り大きな力とはなり得ない。
『The Paradox of American Power』はアメリカの力を維持し、露呈された脆弱さを今後どうやって緩和していくかを示している。確実に世の議論に一石を投じる本であり、われわれが突如放り込まれたこの複雑な世界を理解したいと願う人には必読の書である。(Book Description) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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クリントン政権で国防次官補を勤めた、ジョセフ・ナイ、ハーバード大学ケネディースクール学長の書き下ろしです。筆者の主張は、本書の副題にあるように、冷戦終結後唯一の超大国となったアメリカ合衆国がなぜ一国ではやって行けないか、国際協調の重要性を力説するものです。2001年9月11日の同時多発テロをふまえて、近視眼的に国益を追求する米対外政策の一国主義、傲慢さ、偏狭性に警鐘を鳴らしています。
本書でも前著Bound To Lead(邦題『不滅の大国アメリカ』)で展開したソフトパワーという概念を援用していますが、新しいキーワードは、情報革命とグローバル化です。冷戦の終結と相俟って、1990年代のアメリカは --- 日本の「失われた10年」とは対照的に --- 政治、軍事、経済、文化のほとんどすべての面で唯一の超大国となりました。しかし、ナイ教授は、情報革命とグローバル化の進展によって、国家から非国家へ、米国からその他の地域へパワーの拡散が起きつつあると喝破しております。テロリズムも、グローバリゼーションの一環である、戦争の「民営化(privatization)」の現れと指摘しています。こうした時代潮流の変化の中で、アメリカといえども一国では解決できない問題に直面しており、前著の題名をもじって、"we are not only bound to lead, but bound to cooperate"(我々は指導力を発揮するように運命づけられているだけでなく、協力するようにも運命づけられている)という議論を展開しています。
国際政治学、安全保障論の専門家だけでなく、21世紀の国際関係に関心を持つすべての方にお勧めしたい好著です。英文は平易ですが、おそらく翻訳も出ると思います。
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