Agallochによる2002年の作品。
Agallochはアメリカ合衆国の作曲家で、この以前にも作品を発表している。ただ、この作曲家については私自身、作品を聴く以前の段階にすでに大きな疑問を感じていた。その理由は、信じがたいほどの多くのジャンルにおいて紹介されている方がいる上、その評価もまるでぶれることなく、推薦盤とされているためである。
日常的にForkやDoomのあたりを愛聴なさっていると思われる方のサイトで目にしたこともあれば、Melodic Death Metalと位置づけ、主にDeath MetalやBlack Metalを紹介している方のコメント欄で偶然見かけたこともあり、一方あるディスクガイドではPost/Shoegaze Black Metalの一作曲家として語られていることでさえあった。
これほど幅広いジャンルで聴き手を惹きつける作曲家は、私が考える中ではそうそう見当たらない。
聴けば確かに頷けるのではあるものの、これは彼らが一作曲家として一つの「極致」に到達していることを裏付けているとも言えるのではないだろうか。従来、Heavy Metalの概念の中でも、多くサブジャンルとして扱われてきた音楽に散りばめられた要素を見事に自分たちの「表現」として昇華させている。こう書き切ってしまうのは実に容易ではあるが、これはとてつもない偉業である。
そして、本作品についてであるが、全編を通してアコースティックギターが、曲の展開からメロディーラインの構成に至るまで、相当程度寄与しており、単音フレーズからきめ細やかに絡み合う美しい和音フレーズをはじめ、非常に多彩な聴かせ方をしてくれる。ただ、私が中でも特筆すべきと感じたのは、いわゆるMetalな要素を突き詰めたような、エレクトリックなもう一方の音色が、時に感情の高まりを思わせるかのごとく静かに燃え上がり、また時にまるでそれまで静寂に包まれていた張りつめた水面が揺らめいた瞬間に見せるような美しい輝きを見せる点である。こうした一見異質な両者が絶妙な均衡を保って表現されること自体に対し、私自身は驚きを覚えるが、何より、一つ一つ自身の感情を押さえ込むかのように丁寧に紡がれてゆく、悲しみと孤独に満ち溢れたメロディーラインが印象的である。
「The happiest man is he who learns from nature the lesson of worship - R.W.Emerson」
作品には、このような記載がある。遥かな自然への畏敬の念が、彼らの「音楽」そのものから切実に伝わってくるような気がする。是非、ジャンルを超えて推薦したい作曲家である。