カール・セーガン教授は科学番組「コスモス」で『我々は星屑で出来ている』という名言を紹介しました。これは「全ての人間は兄弟である。私達は皆、同じ超新星で生まれたのだ」(アラン・サンディッジ)の言葉の詩的表現なわけです。ではなぜそのようなことが言えるのでしょう? それは周期律表の元素がこの宇宙で作られた仕組みと各元素の存在比率に深く関係するのです。その「元素の溶鉱炉」の在り処を探る科学(分光学、物理学、化学、天文学、原子核科学...)とそれに関わった科学者たちの物語です。小柴昌俊先生のグループが主導したカミオカンデによる超新星爆発の解析に関する紹介も少し出てきます。(原著が1999年発刊で小柴先生が2002年にノーベル賞を受賞する前であったためか、お名前が明記されていないのは残念ですが) 脚注・用語集・索引が良く構成されているのでとても読みやすいです。(読んでる途中で「この人誰だったけ?」「この言葉の意味は?」という時に役に立ちます!)
この本は「科学の営みとは?」を一般人に分かりやすく書かれた名著の一冊に挙げて良いと思います。「科学とは(エラーの)自己修正過程そのもの」(セーガン教授)という言葉の意味するところがよく分かります。実験結果を説明するために【仮説】を立て(但し、単なる説明で満足してはダメ!)、その仮説から導かれるハズの新発見を定量的に【予測】し、実際に【実験】して予言を【検証】し、予測仕切れなかった処を真摯に受け止めて仮説を【修正】もしくは【新仮説】を打ち立てる。このような【演繹と帰納】の過程を満足がいくまで繰り返す。「その様な過程において科学者として求められる資質とは何か?」が本書を読むと良く分かります。特に【帰納】のプロセスに科学者の個性が現れるのが科学の面白い処ですね。(^-^) 科学者の卵でもある理工系大学生には特にお薦めの一冊です。
この本は「自己組織化」の観点でも面白い内容です。星/元素を生んだ「宇宙のスープ鍋」の議論も、エネルギー・時間・長さのスケールを適宜変換をすれば、地球上の生物を生んだ「生命のスープ鍋」に相通じる処があるように思えました。(平衡プロセス&非平衡プロセス、人間原理的思考) そのような「自己組織化」という新しい科学分野に興味を感じた方は「複雑系」(ワールドロップ著)や「カオス」(グリック著)をお薦めします。(以上の3冊が、科学者列伝としてのポピュラーサイエンス本として個人的にお勧めです (^-^))