4枚組ボックスセット「THE GREAT DECEIVER」の1枚目と2枚目をセットにして再販したもの。
今や幻のボックスセット(ジャケットワークは魔術師のコンセプトで非常に素晴らしい)
内容は、ロックを全く知らなくても、1枚もロックのCDを持っていなくても、
この4枚のライブアルバムを聴けばいい、というようなものになっている。
R・フリップは、話している。自分は世界最高のロックバンドを作ろうとクリムゾンをやったが、
1969年と1974年にそれを達成したと。後者がこの時期、これらのライブアルバムで聴くことができる。
「THE GREAT DECEIVER」の聴き所はいくつかあるが、そのひとつが「Starless」の演奏が2種類収められていること。
歌詞こそまだ暫定的だが、音楽は完成している。メル・コリンズらのサックス隊はいないが、
そのかわりにデヴィッド・クロスのヴァイオリン。
ビル・ブラッフォードのドラムスは、両者でかなり異なっていて聴き比べの価値が大きい。
曲が最大に盛り上がった後、バックの演奏が静まりかえり、
ビルのハイハットだけでR・フリップがテーマを演奏そうする時の
ビル・ブラッフォードのこらえ具合がたまらない。
このアルバム「Vol.1」に収められている「Starless」の演奏は、1974年6月。
「Vol.2」の演奏は同年4月。2ヶ月ほどで彼らのスターレスへの取り組みが著しく進歩している。
4月にはまだこの曲をどう料理していいか分からないというかんじで、次のインプロビゼーション曲に入り、
「トーキングドラム」と「太陽と戦慄パート2」で終わらせる。
6月の演奏では、曲が崩壊する限界ぎりぎりまで自分たちをドライブさせて完全燃焼している。
だからアルバムは、この後何も必要とせず、この曲でしめくくられている。
あの曲を、ライブで、狂気すれすれのレッドゾーンを4人で疾走している。
この時期彼らは、最高のロック・インプロビゼイションバンドで、
スタジオアルバムに収められている曲と並ぶほどに、完成度の高い即興演奏を繰り広げている。
「A voyage to the centre of the cosmos」という
タイトル通りの緊張感と推進力にあふれた名演奏はその代表。
名作『RED』の「スターレス」の前に置かれた
不思議な静けさをたたえた曲「Providence」の基を聴くこともできる。