アルバム「My Heart Will Go On」以来、10年ぶりとなる菊月香織さんのセカンド・アルバム。繊細且つパワフルなドラミングで定評のある二本柳守(ds)をはじめ共演ミュージシャンのツボを心得た好演も印象的。選曲も枠にとらわれない幅広いもので、八代亜紀さんの「舟唄」をほぼ原曲に沿った解釈で歌いきっているのが興味をひきます。かってヴォーカル盤で日本の曲を取り上げる場合、ワン・コーラス単位で外国語と日本語をそれぞれ歌い分けるという方法が一般的でしたが最近の傾向なのか終始、日本語で歌うというパターンも定着。「Smooth Operator」は、シャーディでお馴染みの人気ナンバーで、クールな唄い口が実に鮮やか。対極にあるともいえるこのふたつの音楽的志向性をなんの違和感もなく同時に発揮できるところに彼女のエンターテイナーとしての実力の高さを感じます。近ごろ聴くことの少なくなった「Night Train」での粘っこい歌唱がとてもセクシー。美しい情緒が光る「Sunflower」や軽快な「Love For Sale」で聴きとれるように曲に応じて歌の中の主人公の気持ちを歌い上げるなどその歌詞の消化力にも感心させられます。ブルージーなナンバーからスタンダード、そして演歌調の曲まで多彩な曲が収録された本作品は、ヴォーカルを楽しみ味わう上でありがちなジャンルに拘るといったことが何の意味も持たないことを菊月香織さんならではのエレガントな手法でそっと気付かせてくれます。