奥の深いスパイ小説です。物語の中心線は、ソ連(ロシアではありません)が英国に親ソ政権を作るために画策したテロ計画を英国情報部が未然に防ぐというものですが、単にスパイ探しで終わるのではないところが、 Frederick Forsythの凄いところです。出だしは場面が英国とソ連の間を行ったり来たりするので登場人物の関係を押さえるのに一苦労します。しかし、いつの間にかお決まりのスパイ探しに引き込まれて行き、英国当局によって間一髪のところでテロが避けられ、めでたしめでたしと思いきや、とんでもない逆転劇に読者は驚かされることになります。予想外の交渉が読者の知らない間に物語の裏で英国とKGBの間でなされていたのです。そこで、物語の最初に登場した人物達の関係がパッと手品の種明かしのようにはっきりして来ます。「アー!やられてしまった」という感じです。物語の設定が米ソ冷戦時代なので、少し古い感じもありますが、今でも国際政治の現場ではこのような駆け引きが繰り広げられているのであろうという感を強くする作品です。