1913年、幼い少女が英国からオーストラリアに向かう客船にひとり取り残される。小さなスーツケースのほかに何の身分証明も持たない少女はオーストラリア人夫婦にNellと名づけられ、成人するまですっかり過去を忘れ去っていた。
時は2005年現在に移り、Nellを看取った孫娘のCassandraは、Nellの妹たちから祖母の秘密を聞かされ、弁護士からは英国のコッテージを遺産として残したことを知らされる。Cassandraは、スーツケースの中に入っていたおとぎ話の本とイラスト、そしてNellの記録を手がかりに、英国に渡ってNellが果たせなかった謎解きをやり遂げようとする。Nellが買い取ったコッテージには四方を壁に囲まれた秘密の花園があり、かつては数人しか通り抜け方を知らない迷路庭園で本館の屋敷に繋がっていた。その屋敷の主だったBlackhurst家こそがすべての謎の鍵だった。
別の年代も出てくるが、1913年にNellを船に乗せたAuthoressと呼ばれる女性(名はここでは伏せる)、1975年に英国に渡ったNell、そして2005年現在のCassandraの3人のストーリーが主軸である。Authoressの書いたおとぎ話をまじえつつ時代をあちこちに飛びながら同時に進行するThe Forgotten Gardenは、Mortonの卓越した表現力により、登場人物たちがそれぞれ別の次元で同時に生きているような不思議な錯覚を与えてくれる。どの文化でもおとぎ話とは残酷なものだが、謎が明らかになるにつれ、さらにその残酷さを感じるだろう。
読む体験があまりにも楽しくて読み終えたくなかった作品である。