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本書の主張は、この世界を記述する最良の理論が存在し、我々はそれを正しく理解すべきだ、という一点につきる。その理論とは、量子力学の多世界解釈、テューリングによる計算論の拡張版、ドーキンスの利己的な遺伝子に基づく進化論、そしてポパーの認識論である。
中でも著者の世界観の根幹をなすのが、この世界のコピーが無数に存在するという理論物理学の少数派意見、すなわち「多世界解釈」だ。昨今注目を集めている量子コンピュータの動作を、この多世界解釈に基づいて説明するくだりは圧巻である。(ちなみに著者は量子コンピュータの理論を作った本人である。)
しかし本書の真価は、物理学からは一見遠い分野--生物の進化や人間の自由意志など--を、多世界解釈で大胆に説明している点にある。その理論展開は突飛ながらも論理的で、思わず首肯する説得力がある。また数学と物理の関係を論じ(「数学の本質」)、唯我論を否定する論拠を挙げ(「実在の基準」)、科学の手法に慣れ親しんだ人々が無批判に受け入れている前提を問い直す。
物理学、数学、生物学、そして哲学を自在に行き来しながら世界観を語る。ケタはずれの学者がいたものである。
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