原著は1997年に出版されており、翻訳が出るのが待ちきれなかったので、数年前に原著で読みました。題名が原著と全く異なっていたため(直訳すれば「協調の複雑性」)、遅まきながら先日翻訳が出ていることに気づきました。翻訳文は読みやすく良くこなれていると思います。
本書で扱われているエージェントベース・アプローチとは、自律的に行動する主体(エージェント)が集合的に相互作用を繰り返すことによって、全体として予想できないような現象を創発させる様子をコンピュータ・シミュレーションによって明らかにしようというものです。これによって、経済のみならず、国際政治、文化などの現象もシミュレートできるという研究事例が論文集という形で載せられています。
この方法論は数学的解析の限界を克服し、実験の困難な社会現象を扱うことができるという点で新しい研究の方法論として、複雑系ブームの去った今日でも、一部の研究者によって地道に研究が進められています。社会科学分野では、まだ完全に市民権を得たものとは言えないようですが、将来着実にその重要性を増す分野になるだろうと、個人的には期待しています。掲載されている論文も難解なものではないので、私のような専門外の者が読んでも十分知的刺激を味わえる内容です。