登録情報
|
類似した商品から提示されたタグ(詳細)関連タグ(この商品に近い関連キーワード)を追加する++最初のタグになります
|
殺しは仕方のないことで、自分をそう追い込んだのは世間だと彼は確信している。こんなことは早く終わらせてしまいたいのだ。家族を守るために。息子を育てるために。何よりも日常に平和と安定を取り戻すために。しかし、多くの殺人が心に積み上げてゆくのは、本質的な冷血。どこかで最初のうちに感じていた被害者への同情が徐々に冷え冷えとし、殺しはその度に残酷さを増し、躊躇がなくなり、大胆になってゆく。
そうした殺しの履歴書を、ただひたすら丹念にこの物語は綴ってゆく。ぞっとするほどの恐怖。恐るべき一人称文体。
殺人の一つ一つは決して同じものではないから読者を飽きさせることがない。その都度スリリングであり、淡々と描かれているのは心の壊れてゆく様子である。皮肉でブラックな結末と、その後への空虚な予感とが、さらなる冷気を吹きつけてくる。社会風刺を取り入れながらも、個人の狂気のきっかけを、大きな壊滅へとじわじわと表現せしめた非常に完成度の高い逸品であるとぼくは思う。
主人公が色々なことを考えながらも真面目に淡々と人を殺してゆくのが、現実味がないといえば現実味がないし、リアルといえばリアル、そしてまた、どこかユーモラスだとさえ感じた。
フィクションだということが頭にあったからこそだが、早く殺人を全て済ませて就職し、「まともで平穏な暮らし」に戻りたいという主人公に同情して、応援する気持ちになってしまった。結末はちょっと予想外で、複雑な心境になったが、これはこれでいいだろうと思う。
英文が結構読みやすい。すっきりしていて、汚い言葉もほとんど使われてない上、難しい単語が少ない。ストーリーも追いやすいので、洋書をあまり読んだことがない人にもおすすめ。
|