古書のような装丁。セピア色の本文。一切の文字のない本書は子供向けの絵本のカテゴリーに入れるには惜しい。完成度が高く芸術的で感動した。文字のない分、想像力を働かせて、何度も何度もページを繰るうちに、この本の世界に引き込まれていった。サイレント映画をコマ落しで見ているような・・という表現が近いかなと思う。
小さな旅行カバンに家族の写真を詰め、妻と幼い娘を残して異国へ旅立つ男。言葉も通じず、右も左もわからない場所。なにもかもが見慣れない世界で新たな生活を始めた男の不安ととまどいが強く伝わってくる。そんななかでも人と人との触れあいがあり、友情も芽生える。移民仲間にもそれぞれの事情があって、彼らの過去がエピソードとして古いアルバムをめくるように挿入されていく。
舞台となっている国(?)は多分にSFチックで、風変わりな動物や謎めいた食べ物、奇妙な建物や乗り物などに満ちていて、異国に放り込まれた主人公の視点から見た風景のように見ることもできる。想像力でストーリーを膨らませる楽しみがある。1ページ、1ページを大切にじっくりと眺めて欲しい。買って損はない良本。イチオシでお勧めする。