1曲目「僕はこの瞳〜」2曲目「SAYYES」だなんてインパクトでは最強ロケットスタート、今作のパワフルさの象徴です。しかも3曲目は名作「クルミを〜」。この冒頭3曲は本当に圧倒ですね。
一方「夜のうちに」では、飛鳥の凄さはパワーだけでなく、内的な表現にもあることを窺わせます。それを込めて“たっぷりとした歌い方”が出来る歌手は少ないですね。だから彼の歌声は誰にも真似できない魔法のようなもの。幻想的な世界へその声が誘うようです。ここまで息が流れる能力ある歌手は珍しいでしょう。
今作の聴き所の一つに思えたのは「明け方の君」。朝の爽やかなミディアムナンバーなのですが、歌詞をみるとただの爽やかさじゃないんですね。背景には朝の夢に限って現れる昔の恋人がいます。その呪縛から解き放たれ、新しい恋に生きてゆく決然さを得られた朝の爽やかさなのです。ここには、別れた女でも好きで居続けられてしまう男という動物ならではの心情があり共感してしまいました。男はパラドックスな眩暈から抜け出すのに一苦労な場合が多々あるのです。
他方チャゲ曲はサイケデリックで妖艶さが特徴的。CA楽曲の幅の面白さです。「MOZART〜」の詞は日常の打破。一般人なら会社と自宅の往復、彼ならスタジオの缶詰生活でしょうか。人生、嫌な現実とか仕事で単調(無表情のニュースアナ)な生活になりがちだけど、時には芸術等で感性を刺激し人間性を取り戻したい、とする衝動をチャゲ独特の視点で感じさせます。
そして作品はタイトル「BIGTREE」の壮大さへ。どの歌手にも壮大な曲なんてあるものですが、飛鳥の実声最大声量、響き、メロディ、詩人性フルに使っての壮大さは、スケールが違います。ケタ違い、圧倒的です。また作品はこれで終ってもよかったのですが、その余韻のように置かれた「トゥモロー」が待っている点が名盤たる所以でしょう。
今作ではCAの凄さが完全保存され今も輝きを放っています。このレビューのずっと後で作品に出会った人は、膨大な卒塔婆の群れから金塊をみつけたようなもの。市場での供給過多が逆に今作の価値を見え難くしたかもしれません。