重たい本を開くと、スバラシイ!! 歌舞伎の世界がドーンと迫る。
玉三郎を案内役に、「さよなら公演」の最後の三カ月の集大成。
『籠釣瓶』から『女暫』、…『助六』と、玉三郎の舞台が胸に甦ってくる。
でも、なにより、その舞台を支える歌舞伎座の人々、建物の隅々・一部始終、
一階から三階までの観客の俯瞰、すべてから歌舞伎のエネルギーが伝わる。
歌舞伎座の大屋根、その屋根裏、建物右側の側面がドーンと広がり、
その道路沿いにあった「トンボ道場」、トンボの練習をする若い肉体のほとばしり、
名題下の三階支度部屋で挨拶する玉三郎、三階さん達の真剣な支度風景
長唄部屋や鳴り物部屋、黒御簾の田中傳左衛門、舞台裏のこまごまとした様子、
並んだ下駄、提灯、畳敷の渦、鬘、床山さんの部屋、…、
練習風景と本舞台との対比の妙、玉三郎、勘三郎、仁左衛門、…と、意気を合わす風景。
舞台の合間に談笑しあう歌舞伎の皆さんの素顔、次世代を担う若い役者衆、
暗くてよく分からない場所は、そのままに暗く、
歌舞伎座の大きさと深さ、歴史のキズ跡が、言葉以上を語りかける。
こんなふうに、歌舞伎を丸ごと表現した写真集はなかったのではないか。
本の帯に記された玉三郎のことば
「紙に移された数々の風景、それは現実離れした懐かしい世界だった」
たしかに過去を写し撮った現実なのだが、篠山紀信の仕事が、
「芸術」という領域を超えたのだとも思う。
この底知れぬエネルギーが、歌舞伎座、玉三郎、篠山紀信、それぞれの
新たな飛躍へとつながることを確信したい。