佐渡裕の指揮でベートーヴェンの第9をシンフォニーホールで歌ったことがありますので、その指揮ぶりを間近で体験しています。佐渡裕の豊かな音楽性、多くの団員を掌握するカリスマ性も十分理解しているつもりです。温かい人柄はテレビで見るのと同様でした。
佐渡裕の初のベスト・アルバムは確かに名演奏揃いだと思いました。
ただ、演奏団体も違いますし、収録曲も抜粋ですので、佐渡裕が指揮する名曲アラカルトのような雰囲気が漂っています。悪くはありませんが、ベスト盤の宿命ともいうべきアルバムの個性が薄まるのは仕方がありません。
バーンスタイン作曲の「キャンディード序曲」は、佐渡の師匠の作品ということもあるのでしょうが、迫力満点ですし、スピード感があり歯切れも良く、全体的に明るい音色なのが好感を持てます。ジャズ・テイストの曲を取り上げた時の佐渡の躍動感や音楽のうねりを至る所に感じ、たっぷりとした演奏に仕上がっていました。シエナの高い技術水準には感心します。
「木星」の弦の音色は艶やかで厚みがあり華麗でした。そしてクライマックスへと鮮やかに駆け上っていきました。NHK交響楽団もケレン味のない王道とも言える音を提供しています。指揮者の熱さがこのオケを十分にドライブすればもっと名演奏になるのに、と感じました。
兵庫芸術文化センター管弦楽団は若いメンバーが多く、迫力や熱気は十分に伝わってきます。ただ、マーラーの「アダージェット」のような耽美的な色彩の曲となるともう少し老獪さが必要かもしれません。この曲の深遠さは熟成された年輪のような趣が必要ですから。
ベルリン・ドイツ交響楽団による「スラヴ行進曲」は迫力満点で、見事な出来栄えだったと思います。