クリヴィヌは元々古楽系というわけではないが、最近はピリオド演奏に熱心で、自分で組織したこのラ・シャンブレ・フィラルモニクというピリオド・オケで次々CDを出している。これはその1枚で、「新世界より」にはピリオド・アプローチを取り入れたモダン・オケの演奏はこれまでにもいくつかあるが純粋なピリオド・オケによる演奏はこれが最初らしい。
演奏は、ピリオド楽器ならではの澄明な音色と小編成による見通しのよいすっきりした演奏で、それぞれの楽器の音がとても美しく聞こえる。カラヤン/ウィーン・フィルのような美麗で情緒纏綿たる演奏が好みの人や、ケルテスのような粗さはあるがその分土俗的な感じもする演奏が好みの人には、少々すっきりしすぎと感じられるかもしれない。だが、アンチェル/チェコ・フィルの演奏を好む人にはさほど違和感はないだろう。ただ、当然録音状態は半世紀近く前のアンチェル盤より良いし、ピリオド楽器ということもあって透明感はアンチェル盤以上なのだが、アンチェル盤に漂うチェコの雰囲気は稀薄だし、かといって「新世界」アメリカの匂いもあまり感じられない。とはいえ、これはこれで魅力的で、人気曲ゆえに手垢にまみれてもいるこの曲の持つ本来の美しさを味わうのに良い演奏だと思う。
併録のシューマンの「4本のホルンとオーケストラのためのコンツェルトシュテュック」は、既にガーディナー/ORR盤というピリオド・オケの演奏がある。ガーディナー盤は、音を割ったホルンが野趣を感じさせるとともにオケも含めて強い推進力を持ち、より勇壮さや空間的な広がりを感じさせ、ホルンがそもそも狩猟の角笛だったことをも連想させる演奏である。このクリヴィヌ盤の演奏は、それに比べると全体にややおとなしめで、ホルンの音色もガーディナー盤よりまろやかだ。ひょっとしたらクリヴィヌ盤の方がシューマンらしいという人もいるかもしれないが、個人的にはガーディナー盤の方が面白く最後まで一気に聴けて好みだ。