ティントナーの遺言のようなブルックナーの録音群は、どの演奏もオーケストラが一流とは言えないまでも、曲や指揮者の音楽づくりを聴くには何の問題もないレベルに達している。
その中で、この8番は第1稿を使って演奏しているのが売り物。そうでなければ私自身、このCDやその他のティントナーの演奏を購入することはなかっただろう。
第1稿は演奏されないままお蔵入りになり、ブルックナーは弟子らの忠告を受け入れて、現在聴かれる形(通常のノヴァーク版。ハース版はベースこそ最終稿だが、もう少し複雑な形態だ)に曲を作り変えた。
一聴してわかる違いは何と言っても1稿は最終稿よりはるかに演奏時間が長いこと。その他、第1楽章に壮大なコーダが付いていたり、第2楽章のトリオで全く違う旋律が鳴り響いたり、第3楽章のクライマックスに至る際の音型が違ったり、別の曲とは言わないまでも、楽譜を見なくても違うものだとすぐにわかる。
個人的には第1楽章のコーダは最終稿の形を支持したいが、第2楽章トリオの旋律の美しさは捨てがたい魅力がある。後半2楽章にもこの稿独自の良さが詰まっている。全体としては最終稿が良いと思うが、この稿もたまには聴きたいという感じ。
演奏よりも曲について多くを語ってしまったが、演奏は共感に満ちた素晴らしいものだ。響きが整理し切れていなかったりするところもなしとしないが、瑣末な問題。この曲にはインバルの演奏もあるが、硬質過ぎてついて行けない部分もあるので、ぜひティントナー盤をお勧めしたい。