この映像は'90年に同作品が上演された際、収録されたもの。この作品の定番として定着しているGrigorovich版<Stone flower>である。この映像を見る限りでは、物語上の主人公は石工Danilaだが、事実上の主役はKaterinaとMistress of the copper mountainの2人の女性である。KaterinaのSemenyakaの叙情に徹した踊りとMistressのSemizorovaの鋭敏な技巧と屈曲自在な柔軟性を強調した踊りが好対照を見せ、前者が人の精神の美、後者が宝石の冷ややかな美を象徴する事になった。実際、3幕での彼女達の対決がこの作品のクライマックスを形成する。物語上の主人公Danilaを演じるDorokhovは、当時まだ新人だった筈だが、良く撓る強い足を持ち、高い舞踊技術を駆使して、情熱の迸る踊りと芝居を見せ、Danilaの様々な感情を表情豊かに表現した。サポート力も高く2人の女性とのデュエットも無難にこなす。しかし、全てがまだ若く、円熟期の頂点にいた2人の女性の間に挟まれると、どうしても青く見てしまう。悪役Sveryanを演じるのはY.Vetrov。その巧みな演技力を活かして、小心者だが自分の立場を利用して欲の赴くまま行動する粘液質的性格を上手く演じていた。特にMistressとの対決と自滅の場面での狂気に近い演技は彼のダンシングアクターの実力の真骨頂を見せた(この場面でのSemizorovaの鋭い踊りは圧巻だった)。Danse classiqueの技法を用いた石の帝国の場面のアンサンブル完成度の高さは特筆物だし、ロシアの民族舞踏のイディオムを用いた定期市等の民衆達の場面での舞踊家達の型を意識しない自然な動きが民衆の日常を窺がわせて中々興味深い。