小粒なマカロニ・ウエスタン2本―”The Last Gun”(1964)と”4 Dollars of Revenge(1968)”
―を1枚のディスクに収めたBlu-ray。両作とも、マカロニとしても、純粋に作品としても、特
に際立ったところのないB級作品だが、この手の粗雑なアクション作品が好きな人には、
マカロニ最初期と全盛期のサンプル作品としてそれなりに楽しめるだろう。ともに日本未
公開作品(ただし、『早撃ちジム』/『復讐の4ドル』の題で知られる)。
●英題”The Last Gun”(“Jim il primo”)
南北戦争後間もない頃。腕利きのガンマンとして、西部にその名を轟かせたジム・ハート
(キャメロン・ミッチェル)は、悪行から足を洗い、小さな町の雑貨店で、ビルと名を変えて静
かに暮らす決意をする。そんな折、町にジェス(リヴィオ・ロレンツォン)を頭とするアウトロー
一味が流入し、無法の限りを尽くす。町の人間には、なす術もないが、ある日、どこからと
もなく覆面ガンマンが現れ、一味を一人ずつ片づけ始める…。
イタリア製西部劇ということで、間違いなくマカロニ・ウエスタンと呼んでいいとは思うが、
実際は、実にオーソドックスな(ただし、かなり雑な)西部劇だ。64年の作品ということもあ
り(マカロニというジャンルが発展する前の草創期)、マカロニ特有の毒気や殺伐さはなく、
ハリウッドの西部劇の模作をイタリアで作ってみたという感じ。
スゴ腕ということで、常に、名を挙げようとするガンマンに挑まれる男の宿命を描いた『
拳銃王 [DVD]』
や『必殺の一弾』の亜流と言っていいだろう。とはいうものの、亜流としても出来は悪く、
演出、演技ともに平板で大雑把。キャメロン・ミッチェルは、寡黙ながらも実直な元ガン
マンを好演しているが、特に彼である必然性がないキャスティングだ。悪役のロレンツォ
ンは、はげ頭に髭を生やし、豪快に狂気じみた笑いをする漫画的な悪党(このあたりの
造形は、ちょっとマカロニらしい)を楽しそうに演じてはいるが、オーバー・アクト気味で、
滑稽味が勝っている。むしろ、カール・モーナー演じるジムの友人ギターが、悪とも善と
もつかない、一番、マカロニ的なキャラクターを体現していると言えるかもしれない。残
念ながら、気の抜けたマカロニ作品だ。
●英題”4 Dollars of Revenge”(“Cuatro dolares de venganza”)
合衆国騎兵隊のロイ・デクスター大尉(ロバート・ウッズ)は、軍の金貨輸送の護衛の任
務中、強盗団に襲われて金貨を奪われた上、部下を皆殺しにされてしまう。何とか一
人生き残ったデクスターだったが、金貨を盗み、部下を殺した容疑で、裁判にかけられ
る。身に覚えのない彼は、無罪を主張するものの、終身労働の刑を言い渡されてしま
う。重労働に駆り出される厳しい日々が続くが、ある日、脱獄に成功したデクスターは、
自分を罠にはめた犯人を探し始める…。
傑作『
殺しが静かにやって来る スペシャル・エディション [DVD]』のセルジオ・コルブッ
チの弟ブルーノが、脚本に名前を連ねているイタリア・スペイン合作のマカロニ小品。
マカロニ版『
モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫) [文庫]』などと形容されることも多い復
讐劇だ。
夕陽をバックに稜線を行く騎兵隊のシルエットを捉えた美しいショットは、まるで、ジョ
ン・フォードの騎兵隊ものかと見紛うほどだが、話の展開は、フォード作品のような詩
情とは無縁で、次第に復讐劇(と同時に、フーダニット推理劇的要素も含んでいる)へ
となだれ込み、全編にマカロニらしい情念が渦巻く。マカロニの常連、ロバート・ウッズ
は、長身を生かしたダイナミックなアクションをこなし、画的に映える。(マカロニに限ら
ず)西部劇としては珍しい、拳銃ではなく、サーベルでの決闘というのも意表をついて、
なかなか面白いところだ。
本Blu-rayは、パブリック・ドメイン(権利切れ)作品を集めた廉価DVDセットを多数発売
することで有名なMill Creek Entertainmentのもの。映画ファンにとっては、当初、粗
製なDVDを出すヴィデオ会社という悪い印象しかなかった同社だが、最近は、メジャー
各社(ディズニーなど)のライセンス正規盤を出すなど精力的に活動している。本Blu-ray
も、他社から発売されているDVDのマスターとは違い、First Line Filmsの正規HDテ
レシネ・マスターを使用したもの。
ただし、テレシネに使った35mmプリント(ネガやマスター・ポジではなさそう)の状態が
悪かったようで、オリジナル画角収録ながら、全編、褪色気味で、キズ、コマ落ちもか
なり散見される。おまけに適正なカラコレ(色補正)やレストアなども施されていない。
技術的に言えば、間違いなくHD画質(1080p)ではあるのだが、印象としては、DVDの
アップ・スケール的画質という感じだ。音声は、両作とも英語吹替えで、ノイズが多い
が、聞き取れないということはない。特典などの収録はなし。
パッケージ裏に、"The Last Gun"の上映分数が126分と記されているが、実際は、96分
の間違いなのでご注意を。