レナード・スラットキン指揮セントルイス響による「混沌」をテーマとしたアルバムです。
収録曲はハイドン「天地創造」から混沌の描写、アルベルト・ヒナステラの未完の大作
「ポポル・ヴー」、そしてストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」の3曲で、すべて
1990年10月に録音されています。
このCDの価値はヒナステラ未完の大作「ポポル・ヴー」を世界初演&初録音したことに
あります。マヤ族の宇宙の創造と発展を描いた作品であり、バーバリズム丸出しで強烈な
エネルギーを放出しています。トーン・クラスターや特殊奏法、民族楽器の不思議な音が
ふんだんに盛り込まれており、まさに民族音楽であり最先端の現代音楽といった感じの曲
となっています。
ライナーノーツによると、1975年にフィラデルフィア管弦楽団から委嘱を受けたものの、
なかなか作曲が進まず、結局1983年にヒナステラが亡くなったため未完のままとなったとの
こと。本来は全8楽章構成となる予定だったようですが、残されたのは7つの楽章(永遠の夜、
地球の誕生、創造主の目覚め、天地創造の叫び、大雨、トウモロコシの魔法の儀式、
太陽・月・星そして人類の始まり)だけで、最終楽章は残されていませんでした。
未完のまま放置されていたポポル・ヴーの存在に目をつけたのがスラットキンで、世界初演
と初録音に至ったということのようです。
ヒナステラが最後に行き着いた境地がこの曲だったのかと思うと、なかなか興味深いです。
曲自体も刺激的でなかなかおもしろい。一方、このアルバムのメインである「春の祭典」は、
可もなく不可もなく中庸を得た演奏ということができます。
スラットキンとセントルイス響が最も勢いのあった時期の録音ですので、機会があれば聴いて
みる価値はあると思います。ただ、2010年3月時点では廃盤となっており、手に入らないのが
一番の問題ですが・・・。