楽曲の素晴らしさは言うに及ばないので
この作品の持つ大きな意味について書きたいと思います。
ひとつめはこのアルバムはほとんどの曲がフルコーラスの状態でネットに公開されていますが、
そういう作品でもコンテンツが優れていればパッケージングして売り
ヒットできることを証明したことです。
今後キャラクターが飽きられボーカロイドブームが沈静化したら
もしかしたらセールスは望めなくなるのかもしれませんが、
少なくとも「コピーフリーにすると売れなくなる」という
権利者団体のコピー規制や録画規制の根拠がいかに薄っぺらいかを示すには充分だと思います。
そして結果的とはいえコンテンツをあらかじめオープンにし、良かったら買ってもらうという形は
将来コンテンツビジネスの構造を引っくり返す布石となるかもしれません。
ふたつめはJASRAC管理ではないことです。
仮にこのアルバムだけをiPodに入れて聴いた場合、iPod課金で彼らのような中間団体にお金を払う理由がなくなります。
HDDレコーダーやCD-R、DVD-Rなどの記録メディア課金についても同様です。
そしてこの作品に限りませんが、非商用であれば利用は原則自由であるために生まれた
手作りのPVをはじめ、リアレンジ、"歌ってみた"、"演奏してみた"etc...という無数の派生作品。
それはがんじがらめに管理された楽曲ではあり得なかった新しい音楽の広がりでした。
何の権力の後ろ盾もなく無防備すぎるという面はあるものの、同時にそれが強さでもあったのです。
もちろん商売にならなくてはプロも生まれないのでどちらがいいとは一概には言えませんが
創作者側は自分の作品を自由に演奏することもできなくさせるような団体に
当たり前のように管理させることを一度考え直す時期にきているのではないでしょうか。
ほかにも(dorikoさんや19さんといった先駆者も忘れてはいけませんが)DTMの出口を押し広げたこと、
メインボーカルが100%シンセサイザーの音で構成されていること、
実体のない正真正銘のバーチャルシンガーが前面に出ていること、
そしてリスナーがそこに魂を感じるならそもそも歌とは何かということ…。
これらをメジャー流通の場でおこなったという点において、
このアルバムはそのへんの音楽よりはるかに革命的な一枚なのです。