青春伝奇ロマン「BLOODLINK」シリーズなど、ライトノベル界で活躍している作家の久々の新作は、びっくりの単行本デビューでした。文庫の値段に慣れているとなかなか手に出しにくいものですが、そんな心配は一切御無用、期待通り、期待以上の内容になっているはずです。
主要登場人物は三人。キャバクラ嬢24歳、雑誌編集者29歳、女子高生17歳。夜の歌舞伎町で初めて出会った立場・年齢・性格と共通項の全くない三人が、現実のレールから外れて後先考えずに旅に出てしまうロードノベル、というか逃避行ですかね。あとは王道パターンとも言えてしまう展開ですが、はいはいそうですかで終わらせないのが山下卓の描写力。静謐な心理描写で傷や痛みを少しずつ浮かび上がらせていく手法はグッとくるものがありました。透明なのにきっちり根が張っている映像的情景描写は、冬の透き通った空気にぴったりで、ロードノベルならではの場面場面が目に浮かんできます。
そしてなにより、登場人物三人全員に無茶苦茶共感してしまった自分がいるということです。一言一言が痛く身に沁みる、一挙手一動手にいちいち惑わされる。そんな私には、この物語は全くの抵抗なくスーッと入り込んでしまいました。
名台詞あり名シーンあり、繊細で静謐、不器用にそれでもひたむきに生きていく真冬のロードノベル、オススメです。