「浦田賢一」という名が一般的にどの程度認知されているのだろう?博多出身のドラマー、俳優ということになろうが、その顔も彼の音楽作品も、よく知らない人が多いかもしれない。しかし一部の人々にはその名は確実に轟いており、愛されている。個人的にはサンハウスのドラマーとしてその名を知り、幕末青春グラフティRoninでその顔を知った。そしてHAKATABEATCLUBのライブで彼のドラムを見た。この本には、そうした彼の「マニアック」なキャリアが、人生の当事者側の目線で、かなり明け透けに描かれている。生まれ、生父との確執、祖父との交流、暴力、結婚、生活苦とドラマーとしてのキャリアの中断、育児、ミュージシャンとしての再開等々。その内容はリアルで熱くたまらなく濃厚だ。時に笑え、時には泣ける。
一見すると古く泥臭く見えるのかもしれない。しかしそこにあるのは、決して商業的な大成功を収めたわけではないけれど、その場その場で地に足をつけ、しのぎつづけてきた男の精悍な後ろ姿である。そしてその過程で豊かな人間関係を築いてきた男の深みである。つっかかるような博多弁が連発されるこの物語が、著者が60歳を超えた今も変わることなく続いているのは、希望だとすら思う。不景気、高齢化社会、地方沈没...、メディアに踊る手垢がついた常套句に踊らされるよりも、この本を手にとって、楽ではないが決して絶望的でもない人生に思いを馳せるのもちょっといいのではないか。帯にもあるが、確かに映画で見てみたくなる一冊だ。