アントニオ・カルロス・ジョビンのファミリーバンドであるバンダ ノヴァ(Banda Nova)の演奏によるボサ・ノヴァのスタンダード曲集です。ゲストに歌姫ガル・コスタを迎えてのロサンジェルス・ウィルテン・シアターでのライヴ録音です。途中に拍手や歓声、カルロス・ジョビンの語りが入りますので、臨場感たっぷりのアルバムに仕上がっています。1987年の録音ですから、ジョビンが鬼籍に入る7年前の収録です。その意味では貴重な演奏だと言えるでしょう。
今でもよく取り上げられるボサ・ノヴァの名曲のほとんどをカルロス・ジョビンが作曲したということを考えますと、驚異的です。彼が存在していなければ、多分世界中にこれほどボサ・ノヴァ・ブームをもたらすこともなかったと思います。
このアルバムの聞きどころは沢山ありますが、カルロス・ジョビンが語りかけるように始める「三月の雨」は面白い演奏でした。それに吊られる様に女声陣の掛け合いがなんとも温かく、心からこの曲を愛しているのが感じ取れます。「E」で始まる言葉を羅列しながら、少しずつ言葉を展開していき、最後に♪夏の終わりを告げる三月の雨 あなたの心の人生の誓い♪で締めくくるのが、お洒落でいいですよね。南半球のブラジルの気候を感じさせるステキな歌詞で、名曲だと思います。
勿論、「ワン・ノート・サンバ」「デサフィナード」「おいしい水」などボサ・ノヴァの名曲はしっかりと収録されていますし、「ウェイヴ」「コルコヴァード」でのガル・コスタのハスキー・ヴォイスはとても雰囲気があり、ボサ・ノヴァの軽みがいたるところで感じとれます。
あまり取り上げられるアルバムではありませんが、カルロス・ジョビンのヴォーカルとライヴ録音ということを考えますと価値あるアルバムだと言えるでしょう。