注目作家の初長編小説という宣伝文句で手を出したことが、期待外れの失望感となり読み進める毎に大きくなった。
監査調整局によって月毎に「一般州民圏外」に順位付けされた下位州民は、執行該当者として処分される社会を舞台に、執行される州民と執行する者を描いている。
この本が中途半端で安直なのが、凄惨な暴行をする執行官として佐伯と篠田というキャラクターを置いているが、女に欲情している篠田を付けているだけで凄惨に至っていない。
そのあたり新堂冬樹著『
溝鼠』が完全に変態の極致を描いていたし、理不尽な世界として梁石日著『
闇の子供たち』 を思い出し、比較してしまうくらいこの本はアニメの原作本みたいで戦慄する世界となっていない。
社会の構造を解説として挿入し過ぎて小説としては、作品自体を分断してしまっている。
正義VS悪役の構造が単純なのと、作者自ら「戦慄」の語彙を乱用しているため、読者が状況を読むことで戦慄を感じる読書の醍醐味が生まれない。
この程度の作品で特別賞を受賞させていると、ポプラ社小説大賞の存続は危うい文学賞になるとも思った。