邦題『クイック&デッド』
悪徳保安官ヘロッド(ジーン・ハックマン)が牛耳る町、リデンプション。
ある日、その町に謎の美女エレン(シャロン・ストーン)が現れる。町で
は、ちょうどヘロッドが主催する早撃ち大会が催されようとしていた。
ヘロッド自身、ヘロッドの息子キッド(レオナルド・ディカプリオ)、かつ
て悪党だったが、今は牧師であるコート(ラッセル・クロウ)、エース(ラ
ンス・ヘンリクセン)…など、出場者は、いずれも腕に自信のある者た
ちばかり。事の成り行きから、エレンも大会に出場することになるが…。
主演のストーンが、プロデューサーとしても関わっている異色のアク
ション西部劇。サム・ライミ監督らしいケレン味たっぷりの演出で描い
た作品だ。ジョン・フォード作品の常連であり、セルジオ・レオーネの
『
ウエスタン [DVD]』のタイトル・バックで、印象的な殺し屋を演じたウ
ッディ・ストロードの最後の出演作品でもある(クレジット最後で献辞が
出る)。主要出演者の一人、クロウは、当時、アメリカでは全くの無名
だったものの、ストーンの強いプッシュでキャスティングされたとのこ
と。日本衛星放送(現・WOWOW)が出資している作品としても有名
だ。
1対1の決闘こそ、西部劇の醍醐味であり、美学のひとつ。しかし、ほ
とんど全編、それに特化した作品というのは、おそらく本作が初めて
ではないだろうか(『
ウィンチェスター銃'73 ユニバーサル・セレクション第4弾) 【初回生産限定】 [DVD]』
などのように、部分的に、早撃ちコンテストを捉えた作品や『
ワーロック [DVD]』
のように、印象的な決闘シーンが数回出てくる作品はあるが)。その
見せ方も、正統なものではなく、ライミらしく、めまいがするような奇
抜で凝った演出。
キャラクターたちそのものが、随分と戯画化されているので、それだ
けでも、十分すぎるほど作品が「クドい」のだが、決闘シーンのトリッ
キーなキャメラ・ワーク―奇抜なアングル、極度のズームアップ―、
緊迫感を高めるリズミカルな編集など、マカロニ・ウエスタンの更に
上を行くクドさ満載のサービスぶりだ。決闘に特化している分、それ
ぞれが単調に陥らないようにするという、ライミならではの工夫だろ
う。本作における、ライミの演出方針は、スタイルこそが重要といっ
た感じで、1ショットをいかにカッコよく描くかということに注心してい
るように見える。ほとんど、グラフィックノベルの1コマであるかのよう
に、1ショット、1ショットが入念に組み立てられている。結果として、
正統派西部劇の持つ情感、心意気、精神性といったものとは一切
無縁の作品になっているが―と言うより、そもそも、ライミはそんな
ものには興味がなさそうだ―、馬鹿げた(褒め言葉だ)曲芸ガン・ファ
イトを楽しめるという点では、それなりに面白い作品に仕上がってい
ると言えるのではないだろうか。アラン・シルヴェストリによる、トラ
ンペットの旋律も鮮やかなマカロニ風音楽も血沸き肉踊る。
出演陣では、ハックマンの人間味豊かな憎々しげな悪役とディカプ
リオの無鉄砲な少年ガンマンが出色。ストーンは、『
氷の微笑 [DVD]』
を始め、それまでのセクシー女優のイメージ固定化を払拭するため
に、復讐を胸に秘めたハードな役に挑んだのだろうが、埃にまみれ
たヒロインは、やはり彼女には向かないという印象だ。全編、手錠
をかけられたクロウは、野性味あるが、いかんせん出番が少ない
のが残念。
本Blu-rayは、マスター・ポジからHDテレシネ、レストアされたマス
ターを使用したもの。残念ながら、ストーンとクロウのラブ・シーンが
カットされたインターナショナル版。新作のような精細感はないもの
の、全体的にはディテール表現も良好で、色調も深みのある画質。
北米DVDのSuperbit版(日本では、販売元が違うのでその商標で
はないが、同じマスターを使った『
クイック&デッド Hi-Bit Edition [DVD]』
として発売)に比べて、明らかに画質が向上している。音声も明瞭
で、銃声が気持ちいい。特典には、BD-Liveとソニー(コロンビア)作
品数本の予告編が収録。英語字幕も収録。
本作は、北米、ヨーロッパ圏では、ソニー・ピクチャーズ、日本では、
ポニーキャニオンが販売を担当しているが、日本盤発売の暁には、
是非とも日本劇場公開版も収録して欲しいところだ。