作品の顔を任された鬼束が凄い。彼女の歌声にあるキレとしなやかさ、そして独特な世界を楽曲が得て、更に映像の鮮明さが飛躍した。スピッツでは音の革新性も凄いが、草野の声の儚さがユーミンの切なさに通じる発見も印象的。虚無を潜ませた声で淡々と歌う。aikoも案外ユーミンに近い。声がではなく、歌い方が詞を身近にする点。ここに集った面子は皆上手いので曲が本格的になるのだが、彼女は高尚にせずユーミンの歌効用と似ていた。
陽水になり作品が締まり凄みを覚えた。アプローチは自身の「ブルーセレクション」のようにジャズピアノと素敵な声で星空を描く。他方原田の温かい声はユニークな曲にぴったりだ。キリンジはエッセンスを抽出、微分、再び組み直しエレクトロニカのユーミンをみせる。メロが宙に漂う美しさ。一方、引力が加速し小野リサへと流れる様も見所。アプローチは、ユーミンを最も多く歌ったHiFiSET山本潤子の様に、詞を透明にしてゆき、行間を歌の技術で浮彫りにさせる。声は鈴木重子のよう。
槇原は良心で歌う。薬物事件後彼の歌には精神的な深みがあり、ここでも曲を何度も咀嚼した様子が窺えた。実力のフェイが聴けるのも嬉しい。歌が上手く丁寧に奏でる歌手だと本当にユーミン楽曲は変わる。CKBはさすが海の匂いを感じさせる疾走感。グルーヴが大人の肌触りだ。ポートオブノーツの畠山美由紀は抜きんでたしなやかさと落ち着きを持ち、マイナスイオンを放つよう。ユーミン曲の深遠さがその歌声で気付かされる。
田島は今作男声の聴き所。完全に自分の曲にするのがリスペクトというが、この曲こそそれだ。行間を捉える歌い方こそ、空気を読ませるユーミンの特徴だから。椎名の言葉の子音を立たせ詞を震わせる歌も鳥肌もの。鮮やかに景色が甦る。最後は天才大貫。その説得力と自然な存在感はユーミンのわびさび、空気に込められた物語の趣を最も表していた。