この話は、元々、非常に不自然な話で、設定などに無理がありすぎると思っていた。しかし、1巻から4巻までは、それなりに「素晴らしい」とも評価できるいい話で、次の巻を心待ちにしていた。ただ、この巻になって、どうも初期の設定を変えたのではないかと思えるふしがある。バートリー夫人の話にあれだけページをさいたのは、全体のバランスからすると疑問があり、この段階で話が破綻している可能性がある。
一年に二回刊行として、いまの話の展開だと、全20巻ほどでないと収拾しないと思えるので、あと、7,8年完成を待たなければならないのだろうか。設定が変わっている可能性の根拠は、最初にフレイアはクレマンに指示して吸血鬼化を防ぐためワクチンを投与したが、この巻では、あのワクチンは蛇毒などに対応する汎用の薬だとなっている。それはおかしい。
設定について思うのは、例えばジョシュアというのは実は、ヘブライ語起源で「イエス」と同じ名で、このあたり何かトリックがあると思える。フレイアとかオーディンは北欧神話の神の名である。アテナやソフィアはギリシア神話。そして「クオー・ウァーディス(Quo vadis)」というのは、ラテン語で「貴方はどこへ行くのか」という二人称単数形で、「我々はどこへ行くのか」という意味はない。
このままだと話が破綻している。何とか次の巻で、鮮やかに話を切り替える必要があるが、先行きが非常に不安である。この話は完成しない可能性があるが、或る意味で無茶苦茶な設定とはいえ、個々の巻はそれぞれに非常に面白いのは事実である。一体どうなるのか、作者はどう話を収拾させるのかという興味があり、失敗したとしても、十分に面白い話である。構成の出来具合はまだ確定した判断ができないので、面白さで判断すると、星4となる。