複数の基本的な問いが取り上げられ最長七頁程度、最短二頁程度の短い量で簡潔に答えが書かれている。扱われている多くは本当にこの問題をめぐってしばしば聞かれる意見ばかり。中には例外もあるがその大半は純粋な問いというよりは参政権への明白な「反対意見」である。「はじめに」で著者はあくまで事実を指摘する事を目的としていると言うが内容的に考えてどう見ても著者は参政権に賛成の立場から答えを書いている。いわば、事実を事実としてみれば賛成が正しいに決まっている、という考えなのだろう。だから本書のAの多くは参政権への反対意見への反論となっているように見える。
私自身はまだこの問題には殆ど触れたばかりで、だからこそ本書をまず手にとったという段階なので参政権の問題について確固とした意見は持てていない。なので是非などは言いかねるがとりあえず形式面の問題として、一般の素人や入門者向けの平易で薄い本、という体裁のわりに日本語が学者的に読みにくいものになっていたのが気になる。具体的には一つの文が異常に長く、句点なしで読点を頻繁につけながらどこまでも、続いていくという事になっており、ちょうどこんな具合であって、これはちょっとこういう入門書的役割の本に載せる文章としては不味いのではないかと思った。意味がとれないわけではないし、私もどちらかといえばこういう言葉遣いもアリと考えてる口だがやはり本としての立場的にはもっと簡潔な言葉遣いをした方がよかったと思う。もっと言えば丁寧語でそれなりに平易なのだが、一般の人のための入門書にしたいならもっともっと平易でもよかったのではとも思う。
とても薄いので一瞬で読めるが説得力は並という具合。よく見られる素人レベルの反対意見を片っ端から入門の段階で潰しておけるような強い内容ならある種の意義を持っただろうが、反対派に本書を30分で読ませたからといって説得できるかというと疑問はある。しかし全くの本当の入門書としてはなかなか量的には手頃な本ではあるだろう。
追記メモ
Q.参政権は国民固有の権利ではないか
A.憲法の「固有」は国民「だけの」という意味ではなく「他に譲り渡す事のできない」権利という意味であるというのが通説。
不満:変わりうる憲法のほんの一部分の解釈などは参政権問題の是非についてそう本質的ではない気がする。のでイマイチ納得はできない。ただ現状憲法でも解釈のいかんによっては参政権が可能だという事だけは言えそうだ。しかしそれを言うだけでは反対派の反感を解消する事は出来ないだろう。
Q.国籍をとればいいのではないか
A.単に国籍を得られる条件を緩和するだけでは解決にならない。何故なら多くの外国人が自分の元の国籍を失う事に抵抗を覚えるから。この問題を解決するには国籍なしでも参政権を持てるようにするか国籍を捨てなくても新たな国籍を取れるよう二重国籍を許容するかのどちらかだ。
感想:既述のように私の立場はまだ定まっていないので是非は置くとして、一般的には「二重国籍」と聞くだけで「まずい」「ありえない」と反応される(少なくとも私の周囲はそんな人しかいない)中で、そもそも二重国籍は悪くないし回避しようと努力する必要すらないという著者の視点及び実際に二重国籍が多くの国で許容されているという現実の指摘は少なくとも新しい視点を与えてくれるものではあった。また二重国籍がOKになるなら外国人参政権はいらないと言ってるように見えるのも注目。著者によれば外国人参政権という話題自体が二重国籍に寛容でない国でのみ問題となる話題であるらしい。