再生した瞬間,「音が分厚い」と感じられる程の情報量の多さ。艶やかなバイオリンに,つま弾く指の動きまで見えそうなギター,そして,表情豊かなパーカッション。楽器が少ない割には,非常に音数が多い。
アコースティックに拘った録音というだけあって,各楽器の生々しさはかなりのもの。SACDのダイナミックレンジが十分に生かされているようで,コンプレッサーやリミッターの影響をほとんど受けていないように感じる。強烈なアタックから,音の消え際の余韻までしっかりと捉えており,特に弦楽器のピッキングやパーカッションのアタックは鮮烈で,聴いていて気持ちがいい。
音場の見通しもなかなか良好。部分的に距離感のおかしな音もあるにはあるが,基本的にはスピーカーの向こう側に,奇麗に扇状のサウンドステージが展開される。鮮度の良さと,うまい音の配置で,場の雰囲気を再現している。
以上はSACDレイヤーの評価だが,CDレイヤーでは,残念ながら場の雰囲気については一歩後退する。SACDレイヤーと比べると,全体的にガサツキ気味で,ダイナミックレンジもギリギリ一杯という感じだ。クリアネスも段違い。といっても,絶対評価では十分高音質な録音であることは間違いないだろう。
しかし,できることなら,SACDレイヤーを良質なオーディオシステムで聴いて欲しい。昨今のポピュラー音楽のように,音圧重視で録音レベルが高過ぎて歪みまくった音とは違う世界である。