キーシンが十数年ぶりに取り組んだプロコフィエフ集。2008年1月、ロンドン・ロイヤルフェスティバルホールにてライヴ収録。協奏曲第二番・第三番ともに、それぞれ二日間の公演日がクレジットされており、本盤では楽章ごとのセレクション編集が行われているようだ。共演はアシュケナージ指揮フィルハーモニア管。録音は名手アルネ・アクセルベルグが手がけている。
お馴染みの三番は、キーシンとして三度目の録音で、この難曲をすべてライヴ収録というのもこの人らしい。初回はメロディアでの85年チスチャコフ/モスクワフィル(この時わずか13歳!)、二度目はDGで93年アバド/BPO。それから長いインターバルを経ただけのことはあり、表現の深度は確実に増している。
そして注目の(キーシンにとって初の公式録音となる)第二番。瞑想的かつ内省的なアンダンティーノ、疾走感あふれるスケルツォなど、どの部分を切り取っても作曲家の濃い血が流れ出す傑作である。
キーシンがこの曲の録音をなぜ避けてきたのか不明だが、いっけん無機質ななかに秘められた肉感性をよく引き出している。アシュケナージの緻密な指揮も秀逸で、オケの反応もいい。特に複雑なリズムが交錯する終結部は絶品だ。
ただし、これはどちらの曲にも共通することなのだが、強奏部でやや抑制が利き過ぎという印象もあり、またオケとのやり取りにも、ライヴならではの緊迫感と化学反応がもう少しあればと思う。かつての神童が円熟味を増した、とも言えるのだが、アルゲリッチのように齢を重ねてもなお、刃物の切っ先でプレイし続ける人もいる。キーシンにどちらを望むのか、個人的にはやや不満ありとしたい。