ロックの歴史的には、ジミ・ヘンドリクス、ブルー・チアー、グレイトフルデッドや13th・フロアー・エレヴェイターズ(ロッキー・エリクソン)、レッド・クレヨラ、マザーズ・オブ・インヴェンジョン(フランク・ザッパ)らと並ぶ「サイケの古典」バンドと位置付けられることが多い、シド・バレットが唯一全面参加した初期ピンクフロイドのデヴュー作品である。
しかし、単に演奏スタイルや楽曲、あるいはメッセージがユニークであるという以上に、「異常な世界をまざまざと見せつける(聴かせるだけではなく)」と言う意味では、これ以上の作品はない。たぶんこれからも、ないだろう。
シド・バレットとメンバー達が幻視し具現化した、青白くナイーブで、とろけるまでに甘美、そしてどこまでも妖しく畸形的な音世界は唯一無比な試みだろう。決して60年代という時代性や、ロックというジャンルのみで片付けられてしまう安直な作品では決してない。
シドの弾く大胆かつ巧妙なエレキ・ギターのプレイには、自分の内面世界のもっとも深く根源的な、闇の部分をむき出しにされるような思いがする。非常に危険な劇薬のようにも作用する作品だ。
当時、メンバーの一人は「バンドは、シドがいれば他はだれでも良かった」と自嘲的に語っていたが、そんなことはない。リック・ライトの東洋的フレーズのオルガン、ロジャーのベース、ニック・メイソンのパーカション、どれを取っても斬新なサウンドで意欲とエネルギーに満ち溢れている。
個人的には、新バージョンが出るたびについ買ってしまう稀有なアルバムでもある(苦笑)。そしてそのたびに感動してしまう作品なのだ。