たった二晩で録り終えられたというラスト・アルバムで、収録時間も(ほとんど極端に)短いし、飾りの一切ない、限りなくシンプルな作品です。ここに収められている曲の内、すくなくとも「Place to Be」と「Parasite」の2曲はファースト・アルバムよりも以前に作られていたのに、ここまで発表されていなかったものです。そう思って、この2曲を除いてみると、6曲めの「Things Behind the Sun」以外の曲の歌詞がとてつもなくシンプルで短いことがわかります。ひどく落ち込んでいたニック・ドレイクは最後のころの録音で、歌詞が思い浮かばない、ということをいっていたそうですが、そういうことなのかも知れないと思うと、なんだかとても悲しい気がします。
また、このアルバムの内容も以前のものに比べると少し特異で、かなり率直な心情が直接的に歌われているように思います。それが痛々しくもあるんだけど、この透徹したストイックな純粋さは、もう本当に特別としかいいようがないような、何か、ありえないくらいのものに昇華された作品に思えます。
それまではメランコリックな観察者としてのまなざしの強かったニック・ドレイクが、ただ何かに向かって心情を吐露している作品。ソリッドで、本当に本当に悲しいけど、静かにずっと光りつづける傑作です。