第1巻 ピアノ・ソナタ 第1番、第2番、第3番、第4番。2004年3月 チューリヒ、トーンハレ〈ライヴ・レコーディング〉
第2巻 第5番、第6番、第7番、第8番《悲愴》。2004年11月28日 チューリヒ、トーンハレ〈ライヴ・レコーディング〉
第3巻 ピアノ・ソナタ 第19番、第20番、第9番、第10番、第11番。2005年2月27日 チューリッヒにてライヴ・レコーディング
第4巻 ピアノ・ソナタ第12番、第13番、第14番《月光》、第15番《田園》。2005年4月24日 チューリッヒ〈ライヴ・レコーディング〉
第5巻 ピアノ・ソナタ第16番ト長調op.31-1、ピアノ・ソナタ第17番ニ短調op.31-2《テンペスト》、ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調op.31-3、ピアノ・ソナタ第21番ハ長調op.53《ワルトシュタイン》、アンダンテ・ファヴォリヘ長調WoO.57。2005年12月4日、チューリヒ、トーンハレ
第6巻 ピアノ・ソナタ 第22番、第23番《熱情》、第24番、第25番、第26番《告別》。チューリヒ、トーンハレ<ライヴ>
第7巻 ピアノ・ソナタ第27番 ホ短調 作品90、第28番 イ長調 作品101、第29番 変ロ長調 作品106 《ハンマークラヴィーア》。2006年5月21日 チューリヒ、トーンハレ (ライヴ録音)
第8巻 ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 作品109、ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 作品110、ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111。2007年9月23日録音。
マンフレート・アイヒャーが録音にあたってまずシフのために考えたのは、この録音を行う環境だったろうと思う。この『環境』を重要視するのはECMにおいて、キース・ジャレットの『ソロ・コンサート』や『ケルン・コンサート』のような唯一無二とも言える名盤がどのような環境下で生まれてきたか、を熟知しているからだと思う。つまり、コンサートのライヴ演奏におけるピアニストの緊張感をほとんどリスナーがいないと思われるが、唯一無二の響きを創りだすホールで空間として創りだす。そのために選択されたのが『チューリヒ、トーンハレ〈ライヴ・レコーディング〉』だったのだと思える。
そしてシフは、ベートーベェンの『新約聖書』を今までの誰よりも作曲順にしかも短期間に集中して演奏し収録している。ここまでのECMでのシューマンなどのレコーディングはこのベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲録音というピアニストとしての金字塔のための『練習』だったのではないか、と思わせるほどに素晴らしい。
この全集を凌ぐ全集はしばらく現れないだろうとぼくは思う。まもなく登場するであろうポリーニ盤も後期ピアノ・ソナタではやや凌駕するが全曲では聴き劣りするだろう。それはマンフレート・アイヒャーという天才とアンドラーシュ・シフという真摯の努力家二人によって出来上がった全集であるからだ。この素晴らしい8枚を全て聴く楽しみ以上の愉しみもしばらく無い気がする。そして1枚だけ聴くのではなく全て聴くことを強くお勧めする。