フィンランドの作曲家シベリウスがケンプに言ったという、「あなたのピアノからはピアニストの響きではなく、人間の響きが聞こえてくる」という言葉を噛みしめたくなった、ここでのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集(40年間に渡って3回録音した中の最後の全集)の演奏。ベートーヴェンその人が弾いているのかと、そんなことすら思わせる情感にあふれていて、こんこんと湧き出してくる豊かな音楽が満ちていて、感動しました。
なかでも、第21番「ワルトシュタイン」や第23番「熱情」、第30番〜第32番の最後のピアノ・ソナタ3曲の演奏は、素晴らしかったなあ。ベートーヴェンの音楽の生命力と深みが、ヴィルヘルム・ケンプ(1895-1991)が奏でるピアノを通して、自然に、そして生き生きと伝わってくるんです。心に響き、胸を深々と満たしてくれるものがあります。滋味豊かな名演というしかありません。
縦・横130mmの正方形のボックスで、奥行き(背表紙の幅)が20mm 。思っていたよりもコンパクトでかさばらなかったのも、収納という点で有難かったですね。このボックスの中に、カール・シューマンの文章を記した解説書と、表紙と同じケンプの写真が印刷された8枚の紙袋(と、その中にCD)が収納されています。
最後に、録音データを記しておきます。
■1964年1月、第29番〜第32番
■1964年9月、第16番〜第18番、第21番〜第23番、第25番、第26番、第28番
■1964年11月、第1番〜第7番、第9番、第10番、第12番、第19番、第20番
■1965年1月、第8番、第11番、第13番〜第15番、第24番、第27番
ドイツのハノーヴァー(Hannover)、ベートーヴェン・ザール(Beethoven Saal)にて。