フランク・ザッパ門下で最も成功した人物と言っても過言ではないと思われるスティーヴ・ヴァイは1960年ニューヨーク州出身。1974年,速弾きの元祖とも言われるジョー・サトリアーニに師事したのち,1978年に,採譜係から抜擢されてフランク・ザッパのグループへ。その後も,ヴァン・ヘイレンを抜けたデイヴ・リー・ロスのソロ盤や,アルカトラス,ホワイトスネイクなど,名だたるバンドを渡り歩いて用心棒稼業をこなし,ソロで喰っていける数少ない大物ギタリストへと成長した。
この人のギターは上手いだけでなく,兎に角奔放。音楽性の幅も他のギタリストとは段違いに広い。ヨガの呼吸音が入る電気シタールの7や中近東音階てんこ盛りの12,さらには「お喋り奏法」も登場する8。あらゆる奏法を貪欲に吸収し,遊び心と奔放さを失わない演奏の魅力は,紛れもなくザッパの薫陶を得たものだろう。1990年に出た,彼の2枚目にあたるソロ作の本盤は,その多彩で変態的なギタリズムと,緻密な作品構成力とが,消化不良になることなく幸福にバランスした,稀に見る秀作。彼のギターと若干のキーボードと太鼓だけで多重録音。イベンタイド社のハーモナイザH-3000を始め各種エフェクト類を駆使し,細部に至るまで緻密に推敲の行き届いたプログレッシブで壮大なコンセプト・アルバム。リディア,ミクソリディア旋法を多用する彼のフレージングはジャズ度も高いし,ジャズ・フュージョン方面の方でも間違いなく面白く聴いていただけると保証する。