バーデン・バーデン音楽祭(2005)でのケント・ナガノの指揮による
もので、非常に優れた上演です。また、音質・画質も大変よいです。
総合的にはレヴァイン指揮のメット盤(1993)よりも優れていると思
います。但し、この曲に最初に接する場合には、よりオーソドック
スなメット盤のほうが適しているかも知れません(本当は1982年のバ
イロイトでの上演(シュタイン指揮)がDVD化されるとよいのですが)。
森や聖堂、野山などは全く現れない、抽象的・象徴的な舞台ですが、
奇をてらった部分はほとんどありません(第三幕で現れる「鉄道の線
路」だけは少し「はてな」と思わせられますが)。この舞台は、現実
的な風景ではなく、心の中の世界や音楽的世界の視覚化を試みたも
のです。最近はそのような演出も多いのですが、その中でも成功し
たものだといえます。
メット盤でも素晴らしかったワルトラウト・マイヤー(クンドリー)
の歌唱と演技は、この盤でも見事であり、メット盤とは異なるクン
ドリーの側面を見せてくれる点でもまた興味深いものです。パルジ
ファルという役は、ワーグナー・テナーの中では寡黙な主役のため、
却って難役ですが、ヴェントリスはよく演じています(特に第三幕)。
サルミネン(グルネマンツ)はますます円熟した歌唱を聞かせてくれ
ます。アムフォルタス役のハンプソンも好演です。
ナガノの指揮は、感情によっていたずらに音楽を抑揚させるのでは
ない、どちらかというと淡白な演奏ですが (私はそうでない演奏も
好きなのですが)、本質的に静謐なこの音楽の特質をよくとらえた好
演です。この曲の演奏にはクナッパーツブッシュ指揮のバイロイト
盤(1962)という「別格」のものがありますが、ここでこれと比較す
るのは全く意味を持たないと思わせてくれるほどに、独自の美の世
界を作り上げています。