トランペットという楽器から出ているとは思えないほど暖かくて、繊細で技巧的なフレーズ、
そして類まれな作曲能力とハンディキャップ・・・。
トム・ハレルを知らない人に紹介する場合、一言でいうならこんな感じだろうか。
マイルスのようなスタイルを連想するひとが多いかもしれないが、マイルスのように強烈に
聞き手に突き刺さしてくるようなタイプでない。
あくまでも控えめに、優しくささやいてくれる。しかし、そのひとつひとつの音色とフレーズは
夜空に散らばる星屑のように光り輝いている。
そんなトムのスタイルはうれしいことに、昔から変わりなくこの最新作でも十分に堪能できる。
フェンダーローズを使用している楽曲が多く、全体的に幻想的な雰囲気を作り出し、
知らない風景が続いていく旅をしているような気分にさせてくれる。大きな期待と少しの不安が
まざったようなドキドキとワクワク感。
個人的には7曲目の「THE SEA SERPENT」がお気に入り。
色気のあるフェンダーローズの音色から、テーマ〜トムのソロと続いていく流れも美しい。
初めて聴く人にも十分にオススメできるアルバムだし、90年台後半〜00年台始めごろの
ストリング入りビックバンドより、こちらのほうがトムの魅力が分かりやすく伝わると思う。
間違いなく現在同じ時代を生きているジャズ・ジャイアントのひとりだろうし、
本当に多くの人に聴いてもらいたい。
最後に、ハンディがありながらコンスタントにリーダー作をだしてくれるトムに、
ただただ、ありがとうと言いたい。