アルコールに弱い私でもドライ・マティーニかローヌ地方のフルボディワインが欲しくなる、オトナの雰囲気プンプン漂うワンホーンの名作。個人的にはケニー・クラークへの偏見を解消させてくれたことで忘れられない一枚だ。トコトコタカタカ自我を極力隠し通す慎ましさがどうにも好きになれぬ個性に欠けた爺様と思いきや、1,3,5のフィリー・ジョー・ジョーンズさながらの激情的なドラミングには、全く耳から鱗をたっぷり落とされました。
主役のデックスも野太いトーン全快で、男の世界を謳歌し続ける。技巧で語られる演者ではないので1の危なっかしさはご愛嬌だけれど2,4のスタンダードバラード、特に「Stairway to the stars」は絶品だ。♪星空への階段を作り、歩もう 今宵二人の愛は歌声で満たされていくだろう(拙訳)〜インパルス時代のジョニー・ハートマンの絶唱を支えた、イリノイ・ジャケーの淫靡な名演を髣髴とさせる会心の出来!腰の据わったケニーのシンバルとスネア、唸り節を我慢して脇を固める「老いたセイウチ」時代のバド・パウエルのバッキングも素晴らしい、思わず咽び泣きそうになるベストトラックと断言したい。ピアノトリオの7では才気に溢れた時代を懐古するように、一瞬の光芒を放つバドのプレイが秀逸。色々な意味で聴きどころ満載の名盤である。