誰にも死ぬと思われていた作家が長い入院生活のあと、徐々に現実の生活に復帰してくる様子を描く、割と気楽な導入部で始まる。出来たばかりの文房具屋でみつけた青いノートに、次回作を書き始める。前作では映画だったが、今回は小説を創作しているところが描かれる。この小説が袋小路に入るとともに、重い現実が少しずつ明らかにされていく。いつもの偶然などのテーマが語られもするが、それらは背景となっており、人を描くことが中心となっている。短いが、非常にintenseな物語。いつも通りのクリアーで無駄のない英語で、リーダブルで、一度読み始めると止まらない。でも重い。今回もNew York Trilogyなどと比較した辛口の評価が出てくると思われるが、間違いなく読んで損はしない。たくさんの脚注が挿入されているが、House of LeavesやInfinite Jestのそれとは違い、登場人物たちへのあたたかい眼差しが感じられる。もしかすると、物語を完成させることへの抵抗かもしれない。この世は偶然に支配されているが、自分の行動が結果に影響することも間違いない。自分が惹き起こした事態は、自分が引き受けなければならない。物語ることによって惹き起こされたこととしても。物語られる内容と、物語の構造の一致。