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『ガープの世界』アーヴィング、『フローベルの鸚鵡』バーンズ、『イリワッカー』ケアリー、『ぼくが電話をかけている場所』カーヴァー、『ドリンキング・ライフ』ハミル、『心臓を貫かれて』ギルモア、『アンジェラの灰』マコートなどなど、当代を代表する作家がずらりと並ぶ。しかも、すべて作家のインタビューを踏まえて書いている。癖のある作家の発言がおもしろいのは当然だが、本書の魅力はそのインタビューにまつわる描写にある。アポイント時の電話での会話、訪れた自宅やホテルの雰囲気、作家の風貌、立ち居振舞いなど、直接会わなければ書き得ない作家の人間像がリアルに浮かび上がる。
書店、出版社、作家とエージェントの関係など、英米での出版にまつわる状況についての記述も多いので、出版関係者は興味をそそられるだろう。翻訳文学好きならば誰でも必ずや感じたことがある邦題への不満を述べているくだりや、作品の感想を率直に述べている部分など、ざっくばらんな文体がさわやかだ。現代英米文学の入門書として優れているのは言うまでもない。(齋藤聡海)
内容(「MARC」データベースより)
出版社 本の雑誌社編集部 金子哲郎
まあ、どっちかなんて本人に尋ねてみても判然としないでしょうけれど、優れた「ストーリー」をお気に入りの「語り手/声」で、という風に考えても、あながち間違いではないんじゃないかと思います(親としてはそう思いたいところでもあって…)。
さて、最後の一行をもう一度読みたいがために、もしくはその小説が持つ世界にひたりたいために、ある1冊の小説を何度も始めから読み返してしまった経験は、もちろん大人にだってけっこうあると思います。そして、そこにある「声」は、誰かに読んでもらうわけでもない我々にとって、どこからと言えば、やっぱりそれを書いた小説家から発せられたもの。でも、実際それって何なんだろう、とこだわったところから本書は生まれました。
1作家1作品インタビュー27編によって構成される本書には、3種類の「語り/声」が存在します。すでに多くの読者を得ている作品中の「声」が第1。その作品誕生や時に作家生活スタートの経緯まで語るストーリーテラーたち自身の「声」、そしてそれらを語る著者の「声」です。本書中の例で言ってみれば「『ガープの世界』はどのように語られたのかジョン・アーヴィングがいかに語ったのかを、著者新元良一が語っている」となるわけです。
ニューヨーク在住、テープレコーダーとPowerBookと締め切りを抱え、「声」を求めて飛び回る英米現代文学紹介人/翻訳家と、ちょっと類書が見あたらない取り合わせの作家たちとの「語り」を通じ、今まで作品しか知らなかった作家に改めて出会い、また読み逃していた作家・作品を発見することができる本書は、ジョン・アーヴィングから村上春樹まで、同時代文学ツアーガイドとして最高の一冊になっています。
著者 新元良一
では、ポジティブな力は何かと言うと、その本の世界に入り込んで、それこそ寝食すら忘れ、次の展開がどうなるか知りたくてページをめくる。結末に近づいてくると、終わってほしくない、このままその場所に居続けたいと願う。引き込まれたら最後、そこから離れたくないと思わせる力です!。
この本に出てくる作家たちは、そうしたポジティブな力を発揮する世界を作る人々です。でも、彼らは全知全能の神ではない。お伽噺に出てくるような、魔法の杖を一振りするだけで、ページの中に宿った世界を生み出すわけではありません。構想をどこから持ってくるか。どんな言葉を取り入れ、どうやって文章をつないでいくか。いかなる登場人物を使うか、あるいは誰を語り手にするか。多大な神経と労力を注ぐことによって、初めて“自分たちの魔法の杖”を手にし、未知なる世界を創造する人々です。少し欲張りですが、魔法の秘密を知りたくて、彼らに直接会って聞いた話がここに綴られています。海外文学好きの方、物語をこれから書きたい方、そんな魔法に少し興味を持っていらっしゃる方に、創造主となる作家たちの世界を味わっていただけたら嬉しく思います。