最初に聴いて唖然、二度目に聴いて興奮、三度目には喜びと当時の観客に嫉妬さえおぼえる傑作ライブ。MCの紹介"Mr.Soul"そのものの比類なきソウルフルな内容だ。白人向け音楽市場を意識した抜群に上手いが無難なスタジオ作と比べると、ここでは端正で非の打ち所のない歌唱技巧に加えて、豪快な声量と少し割れた声がいい意味での野性味になって黒い迫力満点である。そしてコンサートにおいて自ら演者であると同時に、バック演奏と聴衆を完全に掌握仕切った指揮者のようなここでの彼。教会音楽の説教にも似たパフォーマンスからゴスペル音楽の影響が極めてよくわかると同時に、ポピュラー音楽のライブ演奏をも完璧にこなした稀有なアーティストである事を思い知らされる。
彼の歌が素晴らしいのは勿論だが、観客のレベルの高さも特筆もの。3,5,8,10はサムと観客の共演があってこその興奮と感動である。5前半、客席に語りかけながらシャララララと鼻歌を交えたロマンティックさは「さえずる小鳥」の様だし、後半、観客の合唱を聴いているとまさにその場に居合わせたような錯覚さえ覚える。"You Send Me"の一節も採り入れ、語るように歌うイントロの8は胸焦がれる想いと熱い歌が絡み合う本作の最大の聴きもの。6,10での盛り上がりに合わせて音のレベルを上げるミキシングによる扇情効果や、何より音の良さも本作の大きな特長でRCAならではある。サムと観客が創りあげたある夜の素晴らしい音楽の記録がここに封印され、擬似的でもその場に立ち会える喜びを感じられる激奨の一枚!