本書はしばらく洋書部門売上げ一位だったのでレビューが出るのを待っていたのだが、とんと出ないので私が「最初のレビュアー」になってしまうことにした。しかしこの手の本はサブテクストが読めなければ面白くないのである。だから金融のプロの方とか、我が国の財務省の方とか、誰でもいいが蛇の道(?)を知る方々に是非レビューを書いて頂きたい。
時間軸も内容もほとんど『Too Big to Fail』と被っている(しかもあちらの方が格段に面白い)。金融危機解説も既に類書で出尽くしているので新たにilluminatingな部分もない。自分がいかに睡眠不足の日々を送り、流動的状況に機動的に対処し、議会との折衝に苦労しつつベンとティムと共に救国のタッグチームを組んで戦い抜き、その過程でブッシュ大統領がいかに立派に振る舞い、キャンペーン中のオバマ氏がいかに理知的だったか、という話である。
私などはトリビアとかキャラ突っ込み的な読み方しか出来ない。トリビア(か?)では、中国高官たちとの懇意を嬉しそうに何度も強調する様子が不気味だ。アメリカ人が読んだら気分が良くないだろう。危機渦中、金融業界の重鎮たちがNY連銀に一同に会する機会が何度もあるが、「業界のベスト&ブライテストが結集した様子は壮観」やら書いてしまう。事態を考えるとデリカシーがない。「で、そのベストでブライテストな頭脳やら能力やらが何の役に立ったんです?」と返されるのが分からないのか、元長官。
まあこの人はマッチョで天然の無神経なのだ。同僚に「悪気はないが、no social EQ」と評された人物である。悔恨だの反省だの女々しいことはしない。内省もない。外野は所詮外野で、塹壕で苦労したのはオレなんだ、と思っている。ウォール街の罪などと言っても、調子が良い時は稼ぎ頭だとチヤホヤしといて何をイマサラ、それに起こっちまったもんは仕方がない、というのが本音じゃないのか。最後に、文学好きで大学では英文学を専攻した、というのは本当でしょうか、元長官。