2011年発表の作品。Nick Loweは、元来、パブ・ロックやパワー・ポップというジャンルで語られることが多かったが、1994年のアルバム「The Impossible Bird」あたりから、リズム&ブルース、ロックンロール、カントリー、50〜60年代ポップスなどのアメリカのポピュラー音楽の要素が大きくなった。本作でその傾向がもっとも強くなり、アメリカンミュージックの玉手箱と呼べるような作品になった。Nick Loweはイギリス人であり、アメリカのポピュラー音楽全盛の時代に青年期を過ごした。彼がアメリカとの距離を保ちながら、その音楽に強い憧れをもって接してきた結果として、近年の作品の中でアメリカらしさを存分に表現するという個性が生み出された、と考えられないだろうか。
本作は、前作「At My Age」より落ち着いた曲調で音数が少ない。そして、オールドタイム度が上がった。味わい深いバラード「Stoplight Roses」で始まり、全体的に心温まる雰囲気にあふれている。軽快なテンポとおしゃれなコーラスで迫る魅惑のポップス「Restless Feeling」、エルヴィス・コステロの作品でムーディーに、かつ、力強く歌い上げる「The Poisoned Rose」、オールディーズの雰囲気が全開の「Somebody Cares For Me」などすべての曲がオールド・マジックのようだ。一番の聞きどころである「I Read A Lot」はスタンダードと呼べるほど美しいバラードだ。