ライヴ盤を除くと05年「Day Is Done」以来7年振りのブラッド・メルドー(p)、ラリー・グレナディア(b)、ジェフ・バラード(ds)による
トリオの最新作。最新といっても全11曲中8曲は08年、3曲(M3.8.10)は11年と録音時期に幅があり、この7年間におけるトリオ
活動の集大成の感も。ブート等で既に出回った音源が含まれる可能性があり、旧来のファンは要注意。
メルドーは元々ジャズに留まらない自由な音楽創りをしてきた人で、前スタジオ作「Highway River」はトリオに大規模なオーケ
ストラを加え、まるで一本の映画音楽を聴いている壮大さを感じさせるクロスオーバー的音楽だった。それに比べると本作はあ
くまでジャズに留まりつつ、ピアノトリオというシンプルな編成を追求した濃密な演奏を展開する。
少人数で展開される音楽は、大人数で制作された「Highway」より各人の演奏が押し出され、トリオの理想型である3者対等の
インタープレイを展開しトリオ好きには堪らない。全体に閉塞と緊迫感を感じさせ、開かれた空気のあった前作とは対照的。
収録曲は全てメルドーの自作。07に天逝したサックス奏者マイケル・ブレッカー (「M.B.」)、映画「Easy Rider」の人物ジョージ・
ハンソン (「Eulogy for George Hanson」)、 ギタリストのカート・ローゼンウィンケル (「Kurt Vibe」)…と架空・実在の人物達に
捧げられた楽曲を含む11曲は、本トリオの為に設計されたという。3人のテクニックをうまく引き出した楽曲はスタンダード程のキ
ャッチーさはないが、細かく聴くと割と一貫して明快なメロディを持ち決して難解ではない。
冒頭スピード感たっぷりの「M.B.」、背後で繰り返されるベースライン上でメルドーのピアノが絶妙な緩急をつけながら滑る様が
痛快、壮絶に突っ走るかと思えば突如立ち止まる楽曲の流れも面白い。バラード系で心に残るのは「Dream Sketch」、淡々と刻
むビートにピアノが織り込む情深いメロディの美しさが染みる。神秘的な「Kurt Vibe」、後半旋律を担う楽器が入替わり、早いパ
ッセージを動き回りながらぼんぼん叩き出すグレナディアのベースラインが実に格好良い。
録音状態も優秀だ。3者の鮮度高い音色がほぼ均等に混ざり合い、音像の背後に回りがちなベース・ドラムスにしっかりした存在
感がある。ぼすんと深く鳴り響くウッディなベースや、耳の鼓膜を直接叩かれる様に強烈に鳴り響くドラム音は気持ちが良い。
メルドー歴が浅い故古くからのファンがどう感じるかはわからないが、私は楽しめる一作であった。