本作はオマー自身が語っているように、これまでの作品に比べるとギターが前面には出ていないし、曲が出来たままの姿に近い形で表現されている。そのため、これまでの楽曲のような曲を解体・抽象化・再構築していくようなパートやインプロは影を潜めている。そのぶんこれまで難解でとっつきにくいイメージを持っている人達にも聴きやすい反面、マーズヴォルタのプログレ的な側面が好きなファンにはやや物足りないことだろう。
しかし、このバンドの特筆すべき点である、セドリックがアルバムごとに微妙に歌い方を変えていることや、アルバムごとに焦点が絞られているオマーのサウンドヴィジョンといったことが、しっかりと継続されている。例えば、今作のディレイやリバーブの効いたギターは常にメロディに寄り添うように響いている。
その他にも個人的には、M7などセドリックの美しい声が際立っていることや、音の配置がシンプルになった分、アイキーのキーボードも活躍している(特にM8のチルなソロ…!)ことは評価していいのではないかと思う。
加えてトーマスのドラムが少し変わってきた。日本のファンの中では今なおセオドアの人気が高いが、元々ロックのドラムとは無縁でセオドアに比べるとキャリアも経験も不足しているトーマスがセオドアのようなロック的なタメやノリ、自分色のニュアンスを表現するにはまだまだ時間はかかるだろうが、確実に進歩している。
まだまだこれから先もマーズヴォルタとしての新しいサウンドスケープを見せてくれるのではと期待できるだけの作品に仕上がったことは間違いないだろう。