ネットの映画評(日本語)では、あまりさえた評価はもらってなかったが、歴史ものとしてまずまず見ごたえのある映画だと感じた。
日本人のオカルト好みの期待には答えてないからだろう。これは歴史映画であって、歴史的な背景と史上の人物の葛藤や行動に視点をおいて鑑賞すべきだと思う。
16世紀、宗教改革真っ只中のヨーロッパ(フランス)。カトリックと王朝は既存の宗教的政治的権威を脅かすプロテスタントを中心とした「異端者」たちを迫害する。ノストラダムスは(恐らく迫害からのがれるため)キリスト教に改宗したユダヤ人家庭に育ち、しかもコペルニクスやカバラ(ユダヤ神秘主義)を研究する「危ない」人物だ。といっても彼は天才で何ヶ国語と使いこなし、先進的な医学の知識をもった人物である。
当時ヨーロッパ社会でもう一つ広まっていたのは疫病(ペスト?)である。彼はその医学知識で人々の予防に奮迅するが、それもまた異端として見られる原因となる。そして、不幸なことに、愛する妻と二人の子供まで疫病で失う。もともと幻影をよく見、神秘主義に手をつけていた彼は、いよいよ本格的に予言の世界へと入るのである。
つまり異端と医学(疫病)という当時の社会的背景が彼をして予言者たらしめた。
さらには、彼の能力に目をつけたのが、フランス女王、キャサリン・デ・メディチ。彼女は王が他の女を寵愛するのに嫉妬し、王の死を予言したノストラダムスに近づく。
ここでは王室内部の愛憎が政治的な権力争いと宗教的な支えと絡み合う構図ができる。ノストラダムスが異端的行動をしながらも活動を続けれたこと、そして世に名を売り、歴史に今もその名が残ってるのは、このような背景からだ。
既に1999年を越えた21世紀において、彼の予言にたいするオカルト的な関心は人々にも薄れただろうが、彼が生きた16世紀ヨーロッパ社会、中世から近代へと大転換する幕開けの時代に、自らの葛藤と世界の悲劇をつなぎ合わせた彼のヴィジョンは、何かしら訴えるものがあると感じた。