将来にもあまり期待できそうにないような、ぱっとしない音楽家ばかりが登場する短編集。どちらかというと、ついていない人生にフォーカスが当てられているのに、なぜか読んでいるとすがすがしい気分になる。励まされる。自分も自分らしい生き方で、自分のペースでがんばっていこう、と思える。楽しい気分になる。
東京の満員電車の中にいながらにして、ヨーロッパの空気感(少し埃っぽくて乾いた空気、高い空、はっきりした太陽の光、コーヒーの香り、ひんやりした石畳の感触、どこからか聞こえてくる音楽、など)を楽しめてしまうのはすごい。
さりげないユーモアがちりばめられている作品で、ところどころ、大笑いしてしまったりもするので、その点はご注意を。
(ちなみに、カズオ・イシグロの作品の空気感は、和訳ではなかなか伝わってこない。原文を読むことを強く勧めます。)