大ヒットした前作(全曲フランス語)の印象もあり、今回、全曲英語で歌っていることについては
賛否両論かとも思いますが、彼女のスモーキーでありながら潤いを感じるヴォーカル+フランス
訛りの英語、という組み合わせが(計算なのか結果論なのかわかりませんが)聴いててどっぷり
と浸れる何とも絶妙な空気を醸しだしており、個人的にはこの試みはかなり良い結果をもたらす
ことになったと思います。(おそらく本人的にも当初の目論見以上に満足度の高い出来具合なん
じゃないかな?)
ちなみにそのスモーキー・ヴォーカルからか「フランスのノラ・ジョーンズ」という宣伝文句も付け
られているようですが、カントリー志向を少しずつ作品に混ぜ始めた最近のノラはもとより、大ヒット
した『Come Away With Me』時代のノラにしても、そのイメージを見込んでカーラ・ブルーニ
の本作を聴くと微妙にズレが生じるかも。カーラの方はややフォーキーで、初期のノラよりも
むしろマデリン・ペルーの方が近いような気がします。
収録されている楽曲は全編、イエイツやオーデンといった詩人の作品に彼女が曲をつけたもの
ですが、前述した味のあるヴォーカル、美しく爪弾かれる生ギターの伴奏、そしてそれらが生み
出す雰囲気は、往年の詩人の歌詞を喰ってしまうくらいの存在感。ただし日本盤では、最後の
最後(「Those Dancing Days Are Gone」)にルー・リードの本当に素晴らしい朗読で詩の
存在感を前面にアピールしてアルバムを終えるという非常に心憎い演出も。
最後まで聴き終わったらまた頭から聴きかえす、それを何度繰り返しても聴き飽きない、そんな
アルバムに最近出会っていないという方には、この作品、是非試して欲しいと思います。