90年代アメリカを席巻したグランジは、秀でたフロント・マンに支えられたムーブメントだった。殉死するようなかたちでカート・コバーン、レイン・ステイリーがこの世を去りクリス・コーネル、スコット・ウェイランドは、語弊はあるが平たく言うとハードロックバンドのフロント・マンに収まった。
パール・ジャムは90年代のボブ・ディランとも言えそうなエディ・ヴェダーをフロント・マンに擁してはいるが、他のグランジバンドに較べると各メンバーの音楽的なアイディアの寄与が大きく、本作はそうした素養が全面に開花しバラエティに富んだ仕上がりとなっている。この時代のパール・ジャムは前作あたりからカート・コバーンの死やチケット・マスターとの諍いが影を落としていて、ダウナーな面が強調された時期だった。本作も暗めのトーンのナンバーが並ぶが、静謐な「Off He Goes」やスライドギターをフューチャーした「Red Mosquito」等は、アメリカン・ロックの王道を継承する彼らならではの作品でブームとは別次元で今なお聞く者の心を揺さぶる。
ある特定の時代を象徴したバンドは次第に色あせていくことが多いが、彼らには今後もマイペースで素晴らしい作品を作り続けて欲しい。いまやグランジと呼ばれた世代のバンドで現役なのは彼らだけなのだから。