本作は、前作「8:30」でそれまでの作品を総括した後に発表された、80年代ジャズの進む方向を予報した作品。それはメインストリーム・ジャズへの回帰ということで、その象徴がデューク・エリントンの「ロッキン・イン・リズム」のカバー。4ビート・ジャズの曲が半分を占めるが、ピーター・アースキン、それにジャコ・パストリアスというWR史上最強のリズム隊がフル稼働して充実した作品に仕上がっている。ザヴィヌルの曲が半分以上であるが、ピーター、ジャコそしてウェイン・ショーターが嬉々として演奏を盛り上げており、心なしかザヴィヌルの印象がいつもより薄く感じられるぐらい。それだけWR史上最高のメンバー達がこのアルバムを傑作にすることにコミットしてその通りの成果を得たと言えるだろう。本作のジャコのプレイ、特に「ポート・オブ・エントリー」等は凄いの一言。しかし、ジャコはこの後ソロ活動に重点を置くようになり、WRの中での重みも下がってやがて脱退するのであるから、本作はWR最強布陣によるオリジナル・アルバムとしては最高の作品ということになる。WRの素晴らしすぎる終わりの始まりと言えようか。なお、「8:30」のような派手な作品の後に本作を聴くととまどいを感じるかもしれないが、各メンバーの演奏の迫力はただものでないことがよくわかるので、ヴォリュームを上げて聴くことを薦める。
追伸:ザヴィヌル氏が9月11日に逝去した。このような名盤を残した不滅の功績を称え、感謝するとともに、心から冥福を祈ります。